第1弾

第四章 東大路大輔

そこは交差点だった。四車線道路と六車線道路の交差する大きな交差点。歩道にはアーケードがかかっており、四隅には巨大な、建築規制により高さ制限のあるこの地域において可能な限りめいっぱい巨大な商業ビルがそびえ立っている。このあたりの道路はいつも…

第三章 ナラティブ・アンド・カルキュレーション

……以上ふたつの断片が我々があらかじめ保有していたテキストのすべてだ。「むかしむかしあるところに」ということばがよく似合う寓話的な設定ではあるものの、いまのところそれは我々によって否定されており、すくなくとも「過去に話された現在の断片」とい…

第二章 リチャード・ホプキンス

大きな音が響く、木製のベッドがいまにも壊れそうな音を立ててきしむ。いつものことだ。私達を叩き起こすように毎朝、大地は揺れるのだ。怒っているように、笑っているように、泣いているように、揺れるのだ。 毛布を追いやるように足で蹴り、洗面所へ向かう…

第一章 ドロ屋の少女

少女が歩いている。両手にバケツをさげ、その中はドロがいっぱいにつまっている。少女はドロをはこんでいた。バケツいっぱいのドロを両手にさげ、ドロ収集所まで歩く。ドロを流すと来た道を戻り、浜辺まで歩く。浜辺に着くと、ドロをくみあげる。バケツ二杯…